パンデミックが始まって以来、米国では1,140万人以上の子供がCOVID-19で陽性との検査結果が出されており、そのうち4歳未満の子供の症例は160万人以上に達し、COVID-19による入院総数の3.2%を占めています。 米国食品医薬品局(FDA)と米国疾病対策センター(CDC)が5歳未満の子供を対象とした緊急使用許可(EUA)に向けてファイザーとBioNTech製のCOMIRNATY® COVIDワクチンの安全性データの審査を開始している中、5歳未満の子供にワクチン接種をさせるべきかの判断のために保護者が詳細を把握するにつれて、いくつかの重要な質問が浮上してきています。 5歳未満の子供では投与量は異なるものの、COVIDワクチンに含まれる成分の種類を理解することで、保護者はより多くの情報に基づいた判断ができるようになります。
5歳未満の子供向けのワクチンは、成分は同じなのでしょうか。
完全に同じではありません。ファイザーとBioNTech製のCOVID-19ワクチンの有効成分は現行の成人向けワクチンと同一ですが、子供向けワクチンの冷蔵期間延長を可能にするトロメタミン(Tris)という緩衝液が唯一違います。 トロメタミンは一般的な成分に聞こえないかもしれませんが、科学的な観点からは、1944年に世界的に公開された文献に登場しており、1978年以降は化粧品や美容液、ワクチンにしばしば使用されています。
もう一つの重要な違いは投与量で、5歳未満の子供には3 µgの投与量を3回投与、5歳以上の子供には10 µgの投与量を2回投与、12歳以上には30 µgの投与量を3回投与となっています。
COVID-19ワクチンの成分はどれほど一般的なものですか。
成分がどれほど一般的であるかを確認するために、CASではユニークな視点を提供しています。 100年以上にわたって、新しい化学関連の科学研究が発表されるたびに、CASはその情報をCAS コンテンツのコレクション™に収集してきました。そうすることで、特定の化合物がいつ研究に初めて登場したか、そしてそれ以降もいつ登場しているのか、すべて確認することができます。 各化合物には独自の登録番号が付与されているため、CAS コンテンツのコレクションを使うと、特定の化合物が研究対象となった回数、または研究で使用されている頻度をすべて見ることができます。 COVID-19ワクチンの各成分は、科学文献におけるその普及率と関連付けることにより、それぞれがどれほど科学的に一般的であるかについての洞察を得ることができます。
実際のところ、科学的に最も一般的な成分は、主に食品の成分またはスキンケア製品の成分として、家庭内でも一般的に存在しています。 一方、ワクチンの成分でCAS コンテンツのコレクションにそれほど頻繁に現れてこないもの(脂質など)はより新しいため、登場回数も具体的な用途も少なくなります。 それでも、CASのコンテンツは、このような独特の成分をよりよく理解するのに役立ちます。
日常的に家庭で一般的に使用される成分
最も一般的な成分は、家庭の台所でもよく目にするようなものです。 塩や砂糖のような単体で存在するものもありますが、ゲータレードのようなスポーツドリンクやジェローなどのフルーツゼリーといった一般的な食べ物や飲み物に含まれているものもあります。 成分がどれほど普及しているかをCAS コンテンツのコレクションで調べるには、その登録番号が世界中の出版物で参照された回数に応じて、次のように分類しています。
- 高= 50,000を超える回数
- 中= 10,000~50,000
- 低= 0~10,000
*成分が 1つまたは2つの水分子と共に結晶化した場合のものと、水なしで存在しているものとが含まれる。
科学的に一般的な成分
このカテゴリーは、多少専門化されているものの、さまざまな用途で使用されている成分です。 それらは、医学や研究の分野では最低でも数十年の間使われてきており、家庭の台所にあるようなものよりもはるかに一般的なものです。 最も一般的な成分は、デンプンから自然に形成されるベータシクロデキストリン(BCD)に由来する、興味深いリング状になった化合物、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)です。 BCDは50,000回以上研究されているだけでなく、それに基づく化合物は26,000種を超えます。 比較的新しく登場したのは、1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)です。これは、ホスファチジルコリンと他のレシチンが混合している大豆などの食品で自然に発生するホスファチジルコリンの一種です。 その純粋な形態は、単離または合成を問わず、20年以上にわたってワクチンまたは脂質ナノ粒子において研究されてきました。 モデルナワクチンの安定剤であるトロメタミンおよびトロメタミンHClも、化粧品の成分としてだけでなく、確立されたワクチン成分としてここの一覧に含まれています。
独特な成分
あまり一般的ではない成分としては、モデルナおよびファイザーのmRNAワクチンに使用されている特殊な脂質があります。 これらの脂質は、スパイクタンパク質mRNAを保護し、人体の細胞内への安全な送達に役立つ脂質ナノ粒子(LPN)を構成しています。 LPN技術は30年近く前から存在しており、そのイノベーションにはがん研究が重要な役割を果たしています。 mRNAワクチンの実現には、適切な脂質の発見と開発が必要でした。 これらの脂質成分はまだ新しいものではありますが、COVID-19パンデミック以前から存在していることに注意することが重要です。
今回のワクチンで唯一本当に新しい成分は、パンデミックの開始後に開発されたウイルス関連の粒子だけです。 ファイザーとモデルナの場合、これを構成しているのはCOVID-19ウイルスのスパイクタンパク質を符号化するmRNAの鎖です。 使用されるmRNAは、SARS-CoV-2の元の株に基づいています。オミクロンなど、コロナウイルスの後期変異体を標的とする新しいワクチンがリリースされた場合、mRNAの新しい配列を使用して符号化できます。 mRNAは細胞の細胞質ゾルにとどまり、細胞核のDNAに干渉はしないため、mRNAワクチンは細胞に遺伝的変化を引き起こすことはしません。 mRNAワクチンと同様、ジョンソン&ジョンソン製のワクチンは、DNAの一部を運ぶ改変アデノウイルス-26(ad26)ベクターウイルスを使用して、コロナウイルスのスパイクタンパク質を生成する遺伝子テンプレートを細胞に提供します。 mRNAとDNAはCOVID-19に特異的であるため、これらの成分はパンデミックが始まって以降に開発されたものです。 同じLPN技術を用いた類似のmRNAワクチンが2016年から研究されており、ad26を使ったエボラウイルスベクターワクチンも2016年には開発中でした。
COVID-19のパンデミックにより集中的に行われた研究のおかげで、CAS コンテンツのコレクションにおけるこれら独特な成分の普及は常時拡大してきています。 時間が経つにつれて開発が進み、LPNとad26ウイルスベクターの用途は確実に増えることでしょう。
まとめ
COVID-19ワクチンの製剤と成分に関しては厳しい精査にさらされてきていましたが、ファイザーとBioNTechの5歳未満の子供向けCOMIRNATY® の緊急使用許可に向かって審査中のところまで来ている今、これらの成分がいかに一般的なものか理解することで、保護者は知識に基づいた判断ができるようになるでしょう。 すべての成分の詳細情報をお探しの方は、ワクチン別に全成分を記載したこちらの表をダウンロードの上ご利用ください。
COVID-19に関してさらに詳しく知るには、最新のデータセットやバイオインジケーターエクスプローラー、および査読付きの記事などをまとめたCAS COVID-19リソースコレクションを参照してください。